「そらのいえ保育園」の設計にあたり      みなみまごめ保育園園長 三浦直樹(元そらのいえ保育園園長)


桜の木のあるエントランス

都会の中で暮らす子ども達にも、空、風、日の光・・・という自然を感じながら、心豊かにのびのびと、健やかに育ってほしいと願っています。
そのためには、壁で閉ざされた箱でなく、外に開かれた環境が必要です。視界がどこまでも広がり、日の光を思う存分感じて、そよ風と戯れる。
「そらのいえ保育園」では、そのような「そら」とつながる保育園の実現を目指しました。

私は、建築設計を専門におよそ20年従事してきました。その経験を活かし、設計の専門家としての想いを、全力で「そらのいえ保育園」に注ぎました。
鮮明な色彩や、キャラクターなどの「子どもに媚びるデザイン」ではなく、私たち大人が「子ども達に与えたいデザイン」、その専門性を駆使し、「真剣に、真摯に、創り上げる環境」を子ども達に提案することをコンセプトに致しました。その想いは必ず子ども達に届くと信じて・・・

みなみまごめ保育園園長 三浦直樹
(元そらのいえ保育園園長)

  

基本計画・基本設計 みなみまごめ保育園園長 三浦直樹(元そらのいえ保育園園長)

実施設計      富山大学 貴志雅樹教授 貴志雅樹環境企画室

家具デザイン監修  富山大学 丸谷芳正教授 設計工房MandM

絵画イラスト    松澤由佳

                                   

コンセプトの具現化のため、保育室の外壁をガラスで構成しました(ガラスカーテンウォール)。

そして、自然を感じながらも、快適で、安心、安全な環境を創るため、高性能な複層合わせガラスを採用しました。耐風強度の確保はもちろん、高い遮音性能、断熱性能、防犯性能を実現しています。

また、縦型ブラインドをガラス面に設置することで、日の光、外からの視線をコントロールすることを可能にしています。生活場面の切り替えの装置として、また、プライバシーに配慮したカーテンとして活用します。

 

「そらのいえ保育園」では、1,2階を幼児、3階を乳児の保育室としています。
保育所の設計では、1階を乳児クラスとすることがセオリーです。これは、保護者の引き渡しの容易性が最大の理由と考えています。
しかし、外部からの侵入のリスクの最も少ない安心、安全な環境、一番日当たりのよい「おひさまに近い」環境という主旨から、あえて3階を乳児クラスとしました。

そして、屋上に設けた庭園で安全に乳児は体を動かし、体の発達した幼児は、屋外遊技場代替地の公園にお出かけし、充分に体を動かします。

保護者の方には、エレベータを活用して頂き、3階まで送迎をお願いしています。

  

快適な設備環境

保育室には床暖房を完備し、こども達の居住域における温熱環境に配慮した設備計画としています。
また、潜熱回収型空調機や、ロスナイ換気設備、LED照明の採用により環境負荷低減に配慮しています。
そして保育室天井には、間接照明を設け、落ち着いた環境設定を可能にしています。

落ち着いた内外装

室内は、出来るだけ本物の木材を使用し、温かみのある環境としています。
屋外には、木片を混入した樹脂系の材料を使用し、木調の温かさを感じさせながらも、腐敗や棘のない安全な材料を選定しています。

趣のある植栽

1階保育室のガラス面からは、自然の緑が見える〝壺庭″のような落ち着いた環境となるよう植栽を配置しています。
また、玄関前には、園のシンボルとして桜の木を植樹し、春には桜の花が訪れる人を出迎えます。
屋上には憩いの場として、天然芝と木調デッキからなる庭園があります。

家具

家具も環境を構成する上で重要な役割を担います。
木材で構成した落ち着いた素材感と色彩は、保育室の環境創りの一旦を担っています。
家具の重さは、既製品より少し重いですが、こども達は大切に両手で椅子を運んでいます。
教具棚は、可動式になっていて、環境設定に応じた容易な移動を可能にします。

明るい階段室

建物が3階建てなので、階段の利用も必然的に増えます。そのため、暗く、つまらない階段室ではなく、垂直につながるアートギャラリーを創りたいと考えました。
階段室(屋内避難階段)をガラス張りとすることで、日の光が差し込み、外の景色が望める明るく、心地よい階段室となっています。
また、一部壁面には特殊塗装を施し、磁石で絵画等が固定出来るようにしています。

園の台所「調理室」

おかあさんが、こどもに語りかけながら、台所でごはんを創る。そんなシーンを想い、調理室を玄関正面に配置し、大きなガラス張りとしました。
建物の隅で調理し、いつの間にか給食が配られるのではなく、こども達においしいごはんを創る風景を日々見せています。
調理士の清掃は大変そうですが、衛生管理の意識向上にも繋がっていると思います。

防犯

保育所として、防犯対策は重要な設備です。
「そらのいえ保育園」では、セコム株式会社と契約し、機械警備、防犯用監視カメラを設置し、不審者の侵入防止に努めています。

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